日本人の間違ったアプローチ(2) = アウトプットからのアプローチ
よし!英語を勉強しよう!と思い立った時、あなたがする行動は何でしょうか?
英会話学校に通って駅前留学をすることでしょうか?
それとも「○○点突破!」「TOEIC Part.V徹底攻略」などとタイトルのついたTOEIC型問題集に取り組むことでしょうか?
英会話学校とTOEIC型問題集。この2つは誰でもまっさきに思い浮かぶ方法だと思います。
しかし、残念ながらこのどちらの方法も、漫然とこれだけやっていても英語は身かないのです。
英会話学校の営業のお姉さんの中には「うちで1年もやればみんなペラペラになる」といったことを言う人もいますが、そういった営業トークは信じないほうがよいでしょう。
現実はもう何年も通っているのに、思うように点数が上がっていない人がいくらでもいます。もし今、あなたがただ漠然と英会話学校に通っているとしたら、数ヵ月後のTOEICで現実を知ることになるでしょう。
TOEIC型問題集も同様です。たとえ少し伸びたとしても、継続的には伸びません。以前の私が、3ヶ月間もTOEIC型問題集を取り組んだのにもかかわらず、点数がほとんど伸びなかったことは、すでに述べたとおりです。
なぜ英会話学校やTOEIC型問題集をただやっただけでは、英語を習得できないのでしょうか?
それは英会話学校や問題集は基本的に「アウトプットからのアプローチ」だからです。
一方で、日本人に圧倒的に不足しているのは「インプットからのアプローチ」であり、これが言語習得の基本なのです。
それでは、この「アウトプット」「インプット」とは具体的にどういうものなのでしょうか?さっそく見ていきましょう。
アウトプット・インプットとは?
まずアウトプット、インプットとは何でしょうか?
前回、語学学習の最適な方法は、
[聞く]→[話す]→[読む]→[書く]→[勉強(=文法)]
の順番だということを述べました。これらを整理すると以下のようになります。
| 音 | 文字 | |
| インプット | 聞く | 読む |
| アウトプット | 話す | 書く |
つまりインプットとは、[聞く](『音』のインプット)と[読む](『文字』のインプット)の二つとなります。これが言語習得の基本となります。
インプットはわかったけども、なぜこれがそれほど重要なのか? 皆さん、まだ狐につままれたような顔をしていると思われますので(笑)、この「インプットの重要性」を解説するために、最近の研究に基づく大脳の語学習得のメカニズムについて説明したいと思います。
インプットの重要性〜ウェルニッケ言語野の発火について
大脳において言語の理解を担っているのは左脳の側頭葉にある「ウェルニッケ言語野(Wernicke's Area)」と呼ばれる部分です。
ここで言語の『音』と『意味』の結びつきが行われます。そして、ここで蓄積された言語情報をもとに発音・発生するための中枢は左脳前頭葉の「ブローカー言語野(Broca's area)」に形成されます。
このウェルニッケ野は大量の『音』を聞くことにより開発されます。我々は幼い頃、日本語という『音』に接しているうちに、このウェルニッケ野が刺激を受け、日本語言語中枢が形成されていったのです。
このウェルニッケ言語野は、一つの言語中枢がすべての言語をつかさどるわけではなく、同じウェルニッケ野内にそれぞれ別の独立した言語中枢が形成されると考えられています。
たとえばマルチリンガルの人の場合、各言語をつかさどる部位がウェルニッケ野内に点在することになります。

図をクリックすると拡大表示します。
そして、他の言語を扱うときはそれを母国語に翻訳してから理解するのではなく、その時々に応じて「日本語モード」「英語モード」のように頭を切り替えてその言語のまま理解しているのです。
つまりウェルニッケ言語野は引出しのついた”たんす”のようなものということができます。日本人には、日本語専用の引出しが割り当てられ、英語と接すると英語専門の引出しが作られます。
ただ、この引出しは「通常の会話のスピードで、”大量に”聞き込まないと開発されない」という特徴があります。英語を”大量に”聞き込んでいるうちに、それまで使われなかった神経(シナプス)が刺激を受け、その刺激がある一定量を突破すると、そこに神経経路が形成されるのです。(この現象をニューロンの”発火(はっか)”といいます)。
英語留学に行った人が急に回りの英語が理解できるようになったというのは、こういったメカニズムによって発生しているのです。
何時間のインプットで英語が聞き取れるようになるか?
では、「通常の会話のスピードで、”大量に”聞き込まないと開発されない」といったときの”大量”にとは一体どれくらいなのでしょうか?
一説によると数百〜2000時間といわれています。英語教育コンサルティング会社(株)アイ・シー・シー代表取締役兼TOEIC friends.netチーフアドバイザーの千田潤一氏によれば、英語が聞き取れるようになるための最低時間は2000時間とのことです。
また、海外留学に行った人たちの体験談によると、3ヶ月目ぐらいから急にまわりの人が話していることやTVの内容が聞き取れるようになったという話をよく聞きます。
おきている間ずっと英語に漬かっていたとすると、一日12時間×3ヶ月≒1000時間ということになりますので、やはり最低限そのくらいの時間、英語に触れている必要があるようです。私の体験でも600点を突破するまでは5ヶ月近くを要しました。
しかしながら、普通の日本人は中学で140時間、高校で250時間程度しか英語の授業はありません。これでは、英語の『音』のインプットが圧倒的に不足しているため、英語の引出しは作れません。
しかも、その授業の中身はほとんど「英語の授業を日本語で行う」スタイルです。これでは、日本語の引き出しに無理やり英語を詰め込んでいるようなものです。
ここまでくると、普通の日本人が
- 英語で聞いたものも一回日本語に訳してからでないと理解できない。
- 日本語に訳さないと理解できないので、会話のスピード、TOEICのスピードについけいけない。
(どんなに天才でも英語⇔日本語の翻訳をする限り、スピードに限界がある) - いつまでもカタカナ英語の発音のまま。
という現象に悩む理由がわかります。すべて「英語モード(英語の引き出し)」を作らずに、日本語モードのまま無理やり英語を覚えようとしていたことが原因なのです。
以上より、英語習得での最重要項目は
「『音』のインプットにより脳に「英語モード」を作ることである」
ということがご理解いただけたかと思います。
英会話学校とインプット
では、英会話学校ではインプットはできないのでしょうか?英会話学校ではネイティブの外国人講師を売り物にしているところが結構あります。英会話学校で外国人講師の話していることを聞けば、留学したのと同じで、『音』のインプットが実現できるんじゃないの?そう考える人もたくさんいらっしゃることでしょう。
確かにおっしゃるとおりです。英会話学校を『音』のインプットの場として利用することもできます。しかし、その場合は、時間的にも、金銭的にも著しく投資対効果が悪いのです。ひとことでいえば「もったいない」のです。
仮に1時間の授業に週2回ペースで通ったとしましょう。会話はキャッチボールですので、相手が話すのと同時に自分が話したのでは会話になりません。すると単純計算で[聞く]と[話す]の時間はだいたい半々ということになります。つまり『音』のインプットは1週間で1時間という計算になります。
これを1年続けたとしましょう。その場合でも『音』のインプットの時間はたった50時間です。上にも書いたとおり、ウェルニッケ野に英語の引出しが作成される(=ウェルニッケ野の発火が起こる)のに最低限必要な時間は数百〜数千時間のオーダーですので、全然足りません。
また、私も実際英会話学校に通って見てわかったのですが、忙しい社会人にとって、週2回をコンスタントに英会話学校に通うことはかなり大変です。
平日はいけないとして、土日中心に行ったとしても、時には出張だったり、遊んだり、家族サービスも必要でしょうかから、何週かは週3回通わないといけません。それを1年間続けないといけないのです。
また、金銭的にもかなりの負担となります。週2回で通ったときのレッスン料の目安は年間30〜50万にもなります。
一方でNHKラジオ講座のCDの場合はわずか年間2万円です。これでどこでも好きな場所で大量の英語の『音』のインプットができるのです。
つまり、英会話学校を『音』のインプットの場として利用することもできますが、その場合は、時間的にも、金銭的にも著しく投資対効果が悪いということになります。
もちろん、英会話学校にもよいところはいっぱいあります。そのひとつとしては、貴重なアウトプットの場だということがあげられます。インプットはCDからでもできますが、アウトプットの場は国内ではほとんどありません。
(ちなみに私自身も+300点の中で利用しています。そのときの英会話学校入学に至った動機や、実際受講してみた感想などはまた、本編の中で見ていただきたいと思います。)
以上より、英会話学校を効果的に使う方法は、「別の方法で大量のインプットを行った上で、アウトプットを試す場として利用する」という結論になります。
TOEIC型問題集とインプット
TOEIC型問題集は基本的にはTOEICと同じテスト形式です。そもそもテストはそのときの実力を計るアウトプットのツールです。
アウトプットでは脳に「英語モード」を作ることができないことは、受験英語で皆さん体験済みかと思います。英語中枢が形成される前にTOEIC型問題集に取り組んでしまうと、その努力はすべて日本語中枢で処理され、いつまでたっても話せない日本人のままです。
池田和弘さんもその著書「TOEIC最強の学習法」の中で「短絡的に『テスト問題を解く=点数アップ』と考えるととんでもない思い違いをすることになる。」と述べています。
ただし、これも正しく使えば強力な味方となります。大量のインプットを卒業すると今度はアウトプットのトレーニングに移ります。この段階でTOEIC型問題集を使うと、短期間でのスコアアップに絶大な威力を発揮します。実際この方法で私も700点の大台を突破することができました。
まとめると、「TOEIC型問題集は、大量の『音』のインプットが完了するまでは開いてはいけない」ということになります。
以上で、英語を習得する上でのインプットの重要性と、英会話学校そしてTOEIC型問題集の効果的利用法について述べてきましたが、いかがだったでしょうか?
念のために申し上げますが、私は英会話学校やTOEIC型問題集を否定しているわけではありません。実際、私が+300点をする中でこれらを利用しています。
しかし、これらが「アウトプットからのアプローチ」であることを認識して、それを上手に利用しないと、期待しただけの(お金と時間をかけただけの)効果は得られないということです。
次は日本人の間違ったアプローチの最後「”正しい”英語からのアプローチ」についてです。>>
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